睡眠時無呼吸症候群

症状

睡眠時1時間あたりで、10秒以上の呼吸停止もしくは低呼吸状態（換気量50％以下）が5回以上ある場合、SASであると定義されています。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質を低下させるだけでなく、様々な深刻な影響を身体に及ぼします。睡眠中に呼吸が止まることで、身体は低酸素状態となり、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気のリスクが高まります。また、高血圧、糖尿病、不整脈、心臓病なども引き起こす可能性があるとされています。

睡眠の質を低下は、日中の生活にも影響を及ぼします。強い眠気や疲労感、集中力や注意力の低下により、仕事や学業に支障をきたすだけでなく、居眠り運転など、業務中の事故のリスクも高まります。さらに、頭痛や抑うつ状態といった症状が現れることもあります。
睡眠時無呼吸症候群は放置すると様々な合併症を引き起こし、生活の質を著しく損なう可能性があります。そのため少しでも疑わしい症状がある場合は、早めにご受診ください。

原因

SASは、原因によって閉塞性睡眠時無呼吸症候群（OSA）と中枢性睡眠時無呼吸症候群（CSA）に分けられます。OSAは、上気道が狭くなることで起こり、主な原因は肥満です。首周りの脂肪は、仰向けに寝ると気道を圧迫しやすくなります。 OSAの原因には、肥満以外にも、舌や扁桃が大きい、顎が小さいなどの生まれつきの身体的特徴や、慢性的な鼻炎なども挙げられます。飲酒、喫煙、睡眠薬の使用も悪影響を及ぼします。CSAは、脳の呼吸中枢の異常によって起こり、心不全や脳梗塞、脳出血の後遺症などが原因となることがあります。

検査

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まず、睡眠の質や呼吸状態を調べる睡眠時ポリグラフ検査が行われます。この検査には、自宅で実施できる簡易検査と、入院が必要な精密検査があります。簡易検査では、鼻の下にセンサーを、指に血液中の酸素濃度を測る機器を装着して眠り、睡眠中の呼吸状態や上気道の狭窄の有無を評価します。

精密検査では、医療機関に入院し、脳波や心電図、眼球や胸の動き、口と鼻の空気の流れ、血液中の酸素濃度などを測定しながら、睡眠中の姿勢やいびきの音などを調べます。簡易検査よりも、睡眠の質や呼吸状態を詳しく評価できます。

また、喉や鼻、舌の異常が原因で睡眠時無呼吸症候群が引き起こされることもあるため、X線検査やCT検査などの画像検査で器質的な異常がないかを確認することもあります。これらの検査結果を総合的に判断し、医師が診断を下します。

治療

治療は重症度によって異なりますが、中等症以上では、多くの場合、睡眠中にマスクから空気を送り込み気道を広げる「経鼻的持続陽圧呼吸療法（CPAP）」が有効です。顎が小さい、舌が大きいなどの場合は、マウスピースの装着による治療が行われることもあります。扁桃肥大や鼻中隔彎曲症など器質的な異常が原因の場合は、手術で改善することもあります。

睡眠時無呼吸症候群の治療には、生活習慣の改善が非常に重要です。なぜなら、多くの場合、肥満が原因で気道が狭くなっているためです。具体的には食事療法や運動療法による減量、寝酒の禁止、横向きに寝るといったことがあげられます。減量により、喉周りの脂肪を減らし、気道を広げることができます。アルコールは筋肉を弛緩させるため、気道が狭くなりやすくなるので、寝酒は避けましょう。また、仰向けに寝ると舌根部が気道を圧迫しやすいため、横向きに寝ることが推奨されます。