めまいについて

身体の平衡は①視覚からの情報、②迷路とも呼ばれる内耳からの情報、③全身の筋肉や、関節などからの情報を脳において統合し、眼球の動きや四肢や体幹のバランス、自律神経などを無意識に調節することで保たれています。これらのいずれかの部位で異常が生じた場合に知覚される異常な感覚が「めまい」です。
「めまい」とは医学的には「患者自身は実際には運動いていないのに動いているように感じる確実な異常感覚」(真のめまい)と定義されますが、日常の臨床では身体の平衡がとりにくい不安感や、頭から血のひく感覚、嘔気、精神的な不安もめまいと表現され用いられることがあります。
めまいの治療は原因によって異なります。薬物療法、理学療法、運動療法などが用いられます。
めまいを引き起こす疾患としては、以下のようなものがあります
- メニエール病
- 良性発作性頭位めまい症
- 前庭神経炎
- 突発性難聴
- 遅発性ないリンパ水腫
- 外リンパ瘻
- 前庭発作(血管による聴神経の圧迫)
- 片頭痛関連めまい
- 持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
- 脳腫瘍
- 脳梗塞、脳出血
- 変性疾患
- など
メニエール病
内耳は側頭骨内に存在しており、骨包によって囲まれた骨迷路と、内部にある膜迷路の二重の構造になっています。原因は不明ですが、メニエール病は、膜迷路のリンパ液(内リンパ液)の産生過剰もしくは吸収が障害されて浮腫を起こすことで起こると考えられています。この状態を内リンパ水腫といい、難聴、耳鳴、耳閉感などを伴う眩暈発作を反復します。吐き気を伴うことも多く、症状は10分~数時間続きます。めまい発作の頻度は,年に数回程度から週に数回程度まで症例によって異なります。
何がきっかけになるかはよくわかっていませんが、ストレスや過労が引き起こすとも考えられています。とくに命に関わる病気ではありませんが、経過中に耳鳴りや難聴が進行する場合もあります。治療としてはまずは生活の指導や抗めまい薬、利尿薬、漢方薬などによる薬物療法が中心となります。
メニエール病確実例、重症度の高い症例は中耳加圧療法が施行されることがあります。
治療に抵抗性で症状のコントロールが不良な場合には外科的治療が考慮されます。
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症(BPPV)では、特定の頭位をとることによってめまいが起こります。とくに起き上がろうとした時や、急に振り返ったり、上や下を見たりした時など、頭の位置を変えた時に突然、回転性のめまいが引き起こされます。めまいの中ではよくみられるものと言われています。発作中は眼球が不自然に揺れ動く「眼振」がみられることもあります。
原因は、前庭にある耳石器の耳石が剥がれ落ち、半規管に入り込んでしまうことと考えられています。基本的には耳鳴りや難聴などを引き起こすこともありません。治療法としては、耳石を元の位置に戻す浮遊耳石置換療法という理学療法が有効です。吐き気などの症状が強い場合は、抗めまい薬を用いる場合があります。
前庭神経炎
前庭神経炎は、内耳から脳へ平衡感覚などの情報を伝える「前庭神経」が炎症を起こすことで発症します。原因はウイルス感染とも考えられていますが、まだ明確にはわかっていない部分もあります。風邪を引いた後などに現れることが多くみられます。
症状としては強い回転性めまいが起こり、吐き気や嘔吐を伴う場合もあります。ただし耳鳴や難聴は起こりません。症状は数時間から数日続くことがあり、発作中は眼球が不自然に揺れ動く「眼振」がみられることもあります。命に関わるような危険なめまいではありません。抗めまい薬を服用して経過を観察しますが、神経の炎症を抑えるためにステロイド剤を投与する場合もあります。